至仏岳から見た尾瀬
子や孫に「負の遺産」を残すのは私たち大人の責任
「放射線被ばくの真実-原発のない健康社会を目指して-」
10月2日大阪朝日生命ホール(淀屋橋)で第27回関西大会を開催します。
2011年3月11日東日本太平洋沿岸を襲った大地震と大津波により東電福島第一原発がレベル7という、決してあってはならない大事故(炉心融解と水蒸気爆発)が起こり,東日本一帯の山河や海は放射能に汚染されました。ヒロシマ、ナガサキに原爆を投下されて多くの人たちが原爆症で苦しみ、ビキニ環礁では水爆実験でマグロ漁船が被曝、そして今度は深刻な原発事故です。
最近は報道されていませんが、今も冷却し続けているのですから、膨大な量の汚染水を処理しなければならず、貯蔵施設の漏えいから海洋への汚染が続いているのではないでしょうか。今から30年前に起きたチェルノブイリ原発4号炉の暴走爆発に次ぐ人類史上最悪の原発大事故・大規模放射能汚染です。
私たち日本綜合医学会が主張する健全なる土壌や有機農業、伝統食による予防医学が根底から覆される事態になったのです。かけがえのない国土、郷土、山林、農地、海洋が放射能汚染され、原発近隣では住めなくなり(避難住民は今も約10万人)、まき散らされた放射性核種がじわじわと晩発性障害を起こしていくのですから、予防医学を主張する当学会が第一に取り上げるべき重大な問題ではないでしょうか。
あれからすでに5年が経ちましたが、今はどうなっているのでしょうか?マスコミは、リオから次の東京オリンピックの話題ばかりです。私たちはオリンピックに浮かれていられるほど安心して暮らせるのでしょうか?福島や近隣地域で健康被害はないのでしょうか?
福島県の甲状腺がん調査ではすでに172人(28年6月6日現在の福島県民調査報告)にがんが見つかったとの報告がありますが、環境省は全て放射能の影響とは言えないとして認めていません。一昨年「美味しんぼ」という漫画で鼻血の問題がマスコミをにぎわしたことがありましたが、その後否定され今は話題になりません。
しかし、ウクライナでは30年経つ今でも極低線量被曝(年間被ばく1ミリシーベルト以下)地区で子供たちの健康被害が多く出ているのをNPO法人「食品と暮らしの安全基金」のグループが2012年に見つけ支援活動を続けています。原因は放射線汚染により、そこから採れる汚染された食物(自家栽培の野菜、乳製品、野生キノコ、ベリー類など)を摂取することによる内部被曝なのです。(詳細は講演でお聞きください)
私は一昨年、このプロジェクトに招待されて子供たちの治療をしてきました。私が治療したのは、首が痛い、頭が痛い、ひざが痛い、足が痛いなどと訴える小学生から中学生のこどもたちでした。あまりにも数が多いのです。また、四肢麻痺(運動神経麻痺)の男の子も2人、延べ30人以上を治療しました。
今大会ゲスト講師の西尾正道氏(国立がんセンター名誉院長・放射線医学)によると、「放射線の害は体外被曝より体内被曝のほうが問題で、汚染された食物からセシウムはカリウムと同族、ストロンチウムはカルシウムと同族で同じ動態を示し、筋肉と骨に取り込まれるのです。放射線はDNAを傷つけて細胞を癌化させるだけでなく、体内の水のO-H結合を切断して活性酸素を発生させる。活性酸素もまたDNAを傷つけ癌を発生させるだけでなく、血管壁、細胞膜などを傷つけ動脈硬化を始めあらゆる病気、老化の原因となる。セシウム137は心筋を始め骨格筋など全身に、ストロンチウム90は主に骨に、ヨウ素131は甲状腺に、プルトニウム239は肺に取り込まれ影響を及ぼす。原発推進の立場を取るICRP(国際放射線防護委員会)は被害を過小評価し、また研究をもさせないようにしている。」
日本政府はこのICRPの定めた安全基準の数値に従っています。例えば、愛知県以北の農地と東北沿岸の太平洋が汚染されていますが、一般食品の汚染基準値を100ベクレル/Kgとしています。これに対し、民間の安全安心な食品を扱う団体では「1ベクレル連合」を立ち上げました。放射線は細胞分裂の盛んな胎児や子供たちに影響が大きく、未来を担う次の世代に汚染された食品を食べさせないようにするのは私たち大人の責任ではないでしょうか。
ウクライナでは事故後被爆者救済のための「チェルノブイリ法」が制定され、空間線量年間1ミリシーベルト地区は移住権利があり、5ミリシーベルトは強制移住地域に規制しています。ところが日本政府は20ミリシーベルトまでを住民が帰還できる地域にしました。
子や孫たちのためにも「美しい日本」をこれ以上放射能で汚染させることはできません。また原発が稼働する限り排出され貯まり続ける放射性廃棄物(何万年も放射線を出す)という「負の遺産」を残すべきではありません。
大会では放射能汚染と健康・環境・原発問題を取り上げます。ウクライナの現状と対策とその成果から学び、放射線の健康への影響とその対策法、原発の再稼働の問題と脱原発の生き方、エネルギー問題などについても講演とパネルディスカッションから学び、気づき、深めていきたいと考えています。
東日本大震災以来活動期に入ったと言われる日本列島で、昨年は御嶽山が突然大噴火を起こし、今年は中央構造線上で熊本の大地震がありました。今後、関東直下型や東海・東南海・南海トラフでの連動大地震が予測されています。自分の健康だけではなく、社会の健康、自然と調和した生き方が必要とされているのではないでしょうか。
理事 関西部会事務局長 大杉幸毅